Fukuoka Discovery
Books cyan
Art & Design / Hirao

Books cyan

カルチャー Hirao

南区市崎の静かな住宅街に建つ金子ビルの3階。階段を上って扉を開けると、そこには絵本だけを厳選して集めた専門書店「Books cyan」がひっそりと佇んでいる。このスポットは、福岡の街歩き好きにとって思わず立ち止まる、本当の意味での「穴場」だ。

店主はライターという職業を持ち、言葉への深い感性を仕事としている人物である。その視点が店全体に貫かれており、棚に並ぶ絵本たちは単なる「子どもの本」ではなく、言葉の力、ストーリーテリングの妙、ビジュアルの美しさで厳選されたセレクションとなっている。国内の定番作品から、ヨーロッパの隠れた名作、北米の個性的な作品まで、「なぜこの絵本がここにあるのか」を考えさせられる品揃えが特徴だ。

看板猫のAoの存在も大きな魅力である。カウンター付近でくつろぐAoに癒されながら、時間をかけて棚を眺める時間は、まさに東京や大阪では得がたい福岡らしい「ゆったり感」を与えてくれる。訪問者の多くは、Aoの存在だけで「この店に来てよかった」と感じるほどだ。

最も注目すべきは、店主の手書きPOPと解説である。絵本一冊一冊に、なぜその作品を選んだのか、どんな人に読んでほしいのかが丁寧に記されている。これらのPOPを読むだけで、子どもへのプレゼント選びが一つのプロジェクトのように感じられ、ギフト選びの時間そのものが楽しみに変わる。また、店主への相談も遠慮なくできる雰囲気が醸成されており、「この人の雰囲気に合う一冊を教えてほしい」という依頼にも快く応じてくれる。

利用者層は多様である。子育て中の親が子どもの誕生日ギフトを求めて訪れるのはもちろん、大人が自分自身のために絵本を購入していく姿も多く見られる。昨今、「大人の絵本」というジャンルが注目されている背景には、絵本という表現形式が言葉とビジュアルの両面で深い思考を促し、人生経験を重ねた大人だからこそ感じられる余韻があるからだ。Books cyanの棚にあるのは、そうした大人向けの良質な作品も多く含まれている。

カップルで訪れるのも良い。パートナーがどの絵本に手を伸ばすのかを眺めていると、その人の内面が見えることもある。一冊の絵本について意見を交わす時間は、意外なほど二人の関係を深める。親子で訪れた場合も同じで、子どもと親が同じ絵本を読み、その感想を話し合う体験は、家に帰ってからも続く豊かなコミュニケーションの端緒となる。

マンション3階という隠れ家的な立地は、初訪問時にはやや迷うかもしれない。しかし、その隠れ家感こそが、この店の魅力を一層引き立てている。住所を事前に確認し、階段を上る。その小さなプロセスを経ることで、訪問者は日常から一歩引き離され、スペシャルな空間へ入場する心構えが自動的に整う。

周辺の平尾エリアとの組み合わせも考えたい。同じく平尾には隠れた飲食店や雑貨店が点在しており、Books cyanでの時間を起点に、その周辺を散策するコースも構想できる。本を購入した後、近所のカフェで一杯飲みながらその日に買った絵本をぱらぱらと眺めるのも、福岡での街歩きならではの贅沢な時間だ。

訪問のコツとしては、できれば午後の時間帯が狙い目である。午前中は親子連れが多いが、午後はより落ち着いた雰囲気で棚とゆっくり向き合える。また、新着情報をSNSで確認してから訪問すれば、新しく入荷した作品との出会いも期待できる。

絵本という表現形式は、子どもだけのものではない。言葉を仕事とするライターが営むこの店の棚を眺めていると、改めてそのことが腑に落ちる。一冊が長く心に残り、人生のどこかの場面で思い出され、その時々で異なる意味を帯びてくる絵本の力。そうした体験を求めている福岡の街歩き好きには、ぜひ一度この扉を開いてみてほしい。

最寄り駅は七隈線・平尾駅で、徒歩およそ3分である。

訪問ガイド

所要時間 1〜2時間
おすすめ時間帯 午前中

💡 展示替えのタイミングで内容が大きく変わります。公式サイトで確認してから訪問を。

★★★★☆ 3.8 (6件のレビュー)
福岡県福岡市南区市崎1-1-5 金子ビル301号
月曜日: 定休日 / 火曜日: 定休日 / 水曜日: 定休日 / 木曜日: 定休日 / 金曜日: 定休日 / 土曜日: 13時00分~17時00分 / 日曜日: 13時00分~17時00分
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旅の手配

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