東京・浅草で話題を呼んだ人気和スイーツ店が2025年3月、福岡初出店を果たした「天神茶屋たばねのし」。大名の落ち着いた路地沿いに位置し、連日多くの客が行列をなす注目スポットだ。店名の「たばねのし」とは、束ねられた熨斗のこと。日本の贈り物文化に根ざした屋号からも、この店が和菓子という伝統に向ける誠実さと真摯さが伝わってくる。インスタグラムで映えるビジュアルが先行しがちだが、実は中身で勝負するタイプの一軒で、その誠実な姿勢が福岡での支持を集めているのだろう。
店の顔となる看板商品は「掛川抹茶ブリュレ」(990円)だ。静岡県掛川市産の高級抹茶をふんだんに使った和クレープで、表面をバーナーであぶった香ばしいキャラメル層がアクセント。その下には濃厚でまろやかな抹茶クリームが潜んでおり、一口かじると苦みと甘みが同時に押し寄せる複雑な味わいが口いっぱいに広がる。生地はもちっとした食感が特徴で、洋菓子の形を借りた和菓子といえる仕上がり。掛川産の茶葉は旨味が強く香りの立ち方が一線を画しており、990円という価格帯に十分な説得力がある。同じく掛川抹茶を使った「抹茶ティラミス」(990円)も高い人気を誇り、濃厚な抹茶とマスカルポーネの相性は絶妙だ。季節限定で登場する「掛川抹茶さくらラテ」(700円)も、春の散策に合わせて訪れたい一品である。
この店の最大の魅力は、テイクアウトスタイルにあると言っても過言ではない。和菓子を片手に持ちながら、古着屋やセレクトショップ、個性的なカフェが立ち並ぶ大名の路地を歩く。その光景こそが「たばねのし」の真の楽しみ方だ。大名は福岡でも屈指の散策エリア。天神の喧噪から一歩引いた路地裏には、地元の人たちに愛される隠れた名店が数多くある。新しくこの店が加わることで、散策の拠点がさらに充実する。朝の爽やかな空気の中で、昼間の人気店の賑わいの中で、夕暮れの柔らかい光の中で—時間帯を変えて訪れるたびに、味わいも風情も異なる体験ができる。
営業時間は平日が11:00〜18:00、土日祝は10:00スタートとなっており、不定休のため事前確認が推奨される。混雑を避けたいなら、平日の午後遅めの時間帯がねらい目だ。週末の午前中は行列が予想されるため、時間に余裕を持った訪問をおすすめする。美和ビル1階という立地も良く、大名散策の動線上にある便利さも嬉しい。伝統和菓子の新しい表現と、福岡の奥深い街歩きの両立—この店はそうした両者をつなぐ入口となり得る一軒だ。
最寄り駅は天神駅で、徒歩約7分の距離にある。